半円形の不思議な花。ナウパカが紡ぐハワイの伝説

半円形の不思議な花。ナウパカが紡ぐハワイの伝説

公開日:2023.07.31
更新日:2023.10.11

常夏の島、ハワイでは一年を通して色とりどりの南国の花々を楽しめます。そのひとつが「ナウパカ」で、白い清楚な花が魅力です。この記事ではそんな「ナウパカ」の概要と、その美しい花にまつわるハワイの伝説についてご紹介します。

可憐で不思議な2種のナウパカ

ハワイ諸島 自然

photo by unsplash

ナウパカはハワイ諸島に広く生息する植物です。ユニークなのは、その1〜2㎝程度のかわいらしい花の形です。

通常の植物だと、めしべとおしべをぐるりと円形に取り囲むように花びらがついているのに対し、ナウパカの花びらは半円形で片側のみ。

また生息場所によって、海岸地域に生える「ナウパカ・カハカイ(ビーチ・ナウパカ)」と山間部に生える「ナウパカ・クアヒヴィ(マウンテン・ナウパカ)」の2種類に大きく分けられます。

ナウパカ・カハカイ(海のナウパカ)

ナウパカ・カハカイ

photo by @1955reincarnation / Instagram

ハワイに人が暮らし始める前からハワイの海岸部に生息しており、ハワイ諸島を含むポリネシア地域だけでなくオーストラリアなどでも見られます。

丸みのある多肉質の葉が特徴で薄紫の筋が入った白い幅広の花(大きさ約1.5〜2.5㎝)はすぐに黄色く変色し、1㎝ほどの白い実をつけます。ハワイでは一年中花を咲かせているため、花と実の両方つけている様子がよく見られます。

塩害に強いことから砂防用に植えられることが多く、かつては熟した実から採れる果汁が充血用の目薬や洗髪後の香料として使われました。

また高さが1〜3m程の低木であるナウパカ・カハカイの亜種(近い仲間)に、10〜20㎝程とさらに背が低い「ドワーフ・ナウパカ」があります。

和名 クサトベラ
ハワイ名 Naupaka Kahakai, Aupaka, Huahekili,Naupaka Kai
英名 Scaevola sericea, S.taccada, S. glabra
学名 Scaevola sericia
分類 クサトベラ科クサトベラ属

ナウパカ・クアヒヴィ(山のナウパカ)

ナウパカ・クアヒヴィ

photo by @222baysmini / Instagram

ナウパカ・カハカイ(海のナウパカ)から種が分かれ、比較的低い山間部に移って誕生したものがナウパカ・クアヒヴィ(山のナウパカ)です。

原産地はオアフ島とカウアイ島でハワイ諸島だけで見られる固有種です。生息する島々によって細かな特徴があり、現在は7種が確認されています。

ナウパカ・カハカイと比べて葉は約9〜14㎝とより小さくて硬く、先が尖っています。さらに花びらはより細くなり黄色味がかって、先端は平らに変化しました。また、ナウパカ・クアヒヴィの花(大きさ約1.2〜2.0㎝)には香りがあります。

ナウパカ・カハカイと同じくらいの1.5〜3mの低木で、その黒い実はかつて腫れ物や打ち身の治療に使われました。

和名 なし
ハワイ名 Naupaka Kuahiwi
英名 Mountain Naupaka
学名 Scaevola chamissoniana, S. gaudichaudiana, S. gaudichaudii, S. kilaueae, S. mollis, S. procera, S. coriacea
分類 クサトベラ科クサトベラ属

ナウパカにまつわる悲恋の伝説

ナウパカ 悲しい恋の物語

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ナウパカには半円状の不思議な形の花にまつわる悲しい恋の物語が数多く残されています。

早くからハワイに生息し、薬として活用されるなど、人々の暮らしに深く関わっていたことも伝承が多い理由かもしれません。代表的なものを幾つかご紹介しましょう。

火山の女神のペレの失恋 

ハワイ 自然

photo by unsplash

火山島のハワイで、今も厚い信仰を集めている火山の女神・ペレ。そんなペレがある時、恋人のいる男性を好きになりました。

男性は相手がペレだと知らないまま、ふたりは接近しますが、やがて男性は恋人の元へ帰ってしまいます。それを知ったペレは怒り狂い、それから逃れようと男性と恋人は海と山別々の方向に逃げました。

そんなふたりを周りの他の神々たちは憐み、それぞれの姿を「海のナウパカ」と「山のナウパカ」に変えてくれました。

ナナウとカパカの引き裂かれた恋

ハワイの自然

photo by unsplash

カウアイ島のフラの学校の生徒だったナナウとカパカは恋人同士でしたが、学校修了の儀式前夜に男女関係を結んではならないという規則を破ってしまったため逃亡者になりました。

追跡者のフラ学校の教師に追いつかれそうになったふたりは二手に分かれ、ナナウは崖の上に、カパカは波に削られて出来た洞窟に隠れます。

結局ふたりともクムに命を奪われてしまいましたが、それぞれ山のナウパカ、海のナウパカに生まれ変わることができました。

ナウパカのパワーを取り入れる

ナウパカ

photo by @trump_hotel_waikiki / Instagram

ひとつの花がふたつに引き裂かれたかのような形の花びらを持ち、互いに強い想いを抱きながらもやむなく別れることになった恋人たちにまつわる伝説を持つナウパカ。

そこからナウパカには「大切なご縁や情報を引き寄せる強い力がある」といわれることがあります。

そんなナウパカは日本だと、観葉植物やフラワーエッセンス、ハワイアンキルトの作品、合わせると一つの絵柄が現れるペアリングやペンダントトップなどとして購入できます。

ナウパカが紡ぐ悲しい愛の物語

ハワイでは、海と山それぞれのナウパカの花びらを合わせると雨が降り、それは仲を引き裂かれ、ナウパカに姿を変えた男女が再会を喜ぶ涙だといわれます。

そんなロマンティックな悲恋に想いをはせながら鑑賞すると、花の美しさがより深く感じられることでしょう。